短篇集。
・表題作。言葉より表情より先に手が出る遠田、いつも間違える押切。10年親友をしているが、7年前にたった一度関係を持った日のことをお互いに忘れたフリをしている。それぞれにそれを抱えて“親友”という嘘を吐く。
・「息をとめて、」 佐方巧は、一緒に仕事をしているデザイナーの芥且己(あくたまさき)に勝手に惚れられている。巧の幼馴染みの立見恒夫は芥の後輩で巧の家に頻繁に出入りしていた。恒夫は常々先輩の芥のファンでもあり……恒夫の存在は芥に嫉妬の感情をもたらす。
・「ヘビィ・シュガーの嫌がらせ」 Sな親友にいじめられるM体質。ショート。
・「Candied Lemon Peel」 梶井ファンの父親につけられた名前がコンプレックスの井堂檸檬。その名前を唯一笑わなかったゲイの親友英介とはいつもつるんでいる。英介の忘れ物を勤務先のゲイバーに持っていき、そこでからかわれて。
・「nuotatore nel cantero!」(ヌオタトーレ・ネオ・カンテロ) 岸本は高校時代から久世に13年の片想い。自爆覚悟で告白した。悶々としたその後のショート。
・「スターズ・スピカ・スペクトル」 木路(きじ)の家に出るゼミで一緒だった尾坂の幽霊。姿は視えるけど、声は届かない。
・「うしめし」 ショート。泣きながら告白した相手とつき合えることになって。
・「Touch it again,again,again&again」表題作のその後のショート。
・「I cannot breathe without U」 芥と恒夫が、佐方についてお喋りしているショート。
・「Lemon crush,bitter&sour」檸檬と英介のある日の夜。
表題作は、ショートショートで入れ替わりの視点で語られる。じれじれしてきて上手い。
作品って、作家さんの性質や考え方って出るもんなんだなー。
ようやくそういうこと、考えられるようになった。
『くいもの処明楽』も良かったけど、この作品集には色気がある。
良く出来ている、面白い!
内容も情緒や捻りありすぎで、私には難易度が高い。だけど好き。何度も読めばじんわりくるような。
「nuotatore nel cantero!」は、ただただ恋心を告白した後の悶々とした心情を追ったもの。このタイトルは、泳ぎながら歌うってとこ? それを恋に溺れた自分と携帯電話の水没を掛けている。
「スピカ」は切なすぎた。ショートはオチ。
それにしてもこんな発想、どこからでてくるんだろう。どんなに頑張っても転んでも、この作者さんのような発想は私の中からは出てこない。そこに惹かれるんだと思う。
「うしめし」(笑)タイトルがすでにオチなんだけど。こういう話すごく好き。
まだ二作品しか読んでないで決めつけるつもりはないけど、ベースの思考には、どーもSMがある気がする。
可愛さのあまりに強引にぐちゃぐちゃにしたい。好きな気持ちは根っこにはあるんだけど認めるのは億劫だったり怖かったりで、流されてしまいたい。
そんなカップリングが多い。
そして、文学好きなところも端々に感じていたけど、梶井やあだ名のつけ方見ても好みが一緒かもしれない(苦笑)。
ノック終わったら、この作家さんの作品は読み直したいなあ。
2008/10/7
《こんな人におススメ》
BL読み慣れている人に。それから、まったくBL読んだことのない人に。
ラベル:ヤマシタトモコ
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