2009年06月02日

イルミナシオン

【イルミナシオン】 全01巻  /ヤマシタ トモコ

短篇集。
・表題作。
幹田隆氏(みきたりゅうじ)29歳、公務員。ゲイでないのに、幼馴染みの女ったらし、神経質でいい加減の小矢直己(こやなおみ)に恋している。
彼女をつくる気にもなれず、何もかも捨てたくなる日々。
飲み屋で声をかけられ、自分がホモなのか知りたくて州戸清寿(すどきよとし)についていき、一夜を共にしてしまう。それからゲイの州戸につきまとわれ。

・「ラブとかいうらしい」
親友同士がする恋の話。

・「ばらといばらとばらばらのばらん」
中久は、自分と同じように赤井を見つめる十亀(とかめ)の視線に気づいていた。
女の子の目線から見た、十亀の繊細さ。

・「あの人のこと」
七辺(しちべ)洋平を巡って、周辺の告白。

・「神の名は夜」
デビュー作。
三ヶ島はヤクザの幹部候補。須賀は幼馴染みだが、組では狂犬扱いで手を焼いている。次期組長候補の戸梶は、そんな須賀を快く思っていない。

私のBLベスト10に入る一冊。

この作家さん、軽く読み流せない。ひとつひとつ、じっくりと胸に刺さってくる。
まず、言葉のリズムが絶妙なのだ。音楽を聴いているみたい。
そして、小さな感情や感性の動きや表出をそのままにしておかない。そっと取り出してそれを描いてみせる。
こういうのは天性のもの。羨ましい。
そういうのを楽しみたくて読んでいるのはある。

表題作は、州戸が関わり出して、小康にあった関係が一気に動くのも面白い。
最初が幹田視点、次に州戸、そして小矢に移る。それぞれの孤独が描かれる。孤独にもいろいろあるのだ。
表に出たらふわっと溶けてしまうように、微細な感覚なのだ。
ふたりの成長につれて、お互いの呼び名も変わり、今は苗字。それが微妙な関係を物語る。思いつきそうでなかなか思いつかない。だからシンプルなシーン、呼び名ひとつでぞくっとくる。
幹田の厭世観は私にもあるので、感じ入った。切なすぎる話。

次の話は、トークしているふたりの名前すら出てこない。
この話は特に、私のBL作品のベスト10に入ると思う、すごい。
ベランダという小さな宇宙が、まるでヒッチコックのコメディの舞台のようで好き。これ、舞台向き。
ホモ事変に笑った。こういう遊び、大好き。

「ばらと……」は、中久の正直さにちょっと泣けた。

デビュー作からこんなの描いていたんだ、と、怖くなった。

こういう本に出会うと、読んできて良かったなと思える。ホモの神様、ありがとう。

重い話が多かったので、ラストのコメディにほっとして、救われる。
特に文化祭の十亀と中久に爆笑した。最高。
                         2009/6/01

《こんなふうにおススメ》
めちゃおススメです。
私の中では、くいもの処明楽より、好き。
心のベスト10に入ります。




posted by zakuro at 01:24| Comment(0) | 漫画-BL系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。