短編集。
・表題作。
高校時代の先輩でワガママな夏目は欲求不満だったり、男に振られると藤野辰雄に会いに来る。そんな夏目に辰雄はワガママ込みでずっと片想いしている。
・「知らなくていい」
10年前の高二の夏、親友の上野から告白された梨田は、それを今でも夢に見る。行きつけの店に新しく店長として来たのが、その上野だった。梨田はすぐに気づいたが、彼はすっかり忘れて想い出さない。
・「夕暮れにはまだ早い」
時江は部活のために屋上で寝ていた橋沢を起こす。橋沢の寝言は卒業した先輩の屋代の名で。時江は問いただすが、セフレだっただけで付き合っていなかったと言う。ずっと橋沢を好きだった時江のたがが外れる。
・「甘くない」
告白したのは岸田三昭から。でも今は吉村がめろめろで、外でいちゃつくなと叱られる。それが不満。
・「幸せな人たち」
文昭の父親浩太郎が“再婚”したのは男の直弘だった。
・「全部君のせい」
三善家に世話になっている書生の滝の部屋には、放蕩息子の昭太郎が入り浸る。勉学しか取り柄のない滝だったが、人なつっこい昭太郎に恋している自分に気づく。遊び人の昭太郎に腹が立ち、挑発して抱かれるが後悔する。
作者の初コミックス。盛り沢山。読み応えがある。
新人さんのレベルじゃない、上手い。新人さん、上手い人、多いですよね。腐友たちも話を聞くと新しい人ばかり読んでいる。開拓しがいがあるんだと思う。
この作家さんも、絵の構成もバランス良く、整理できていて読みやすく、導入も一気に引き込む。力を感じる。
絵に既視感あり。誰と似ているんだろう。
「知らなくていい」は、こんなに親友だったのに忘れちゃうもんかなーと疑問を抱えながら読み進んだが、だからこその伏線は予想していてもぞくっとした。
「幸せな人たち」は、文昭のツッコミが楽しい。後書き(中書きだったけど)の「お赤飯」に笑った。
ぶさ猫の欽二さん、最高。ラストの話は投稿作。上手い。きゅーんときた。
四コマの、夏みかんも楽しい。夏みかん食べたい。夏に読むのを推奨。
この一冊、かなり傑作です。
2009/10/31
《こんなふうにおススメ》
初コミックスなのに、読者に気負わせない。良い作品集です。
ラベル:まさお三月
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